星座図鑑・アルゴ遠征隊の神話

アルゴ遠征隊の神話・伝説


金羊毛皮の獲得
(ジャン=フランソワ・ド・トロワ)


ギリシャ神話で伝えられている「アルゴ遠征隊」の物語は、いくつかの星座の物語にもなっています。

この絵では、イアソンが黄金の羊の毛皮を手に入れたところが描かれています。

アルゴ遠征隊の物語

冬の夜空の地平線辺りに、とも座ほ座らしんばん座りゅうこつ座などといった星座が並んでいます。
とも座や、ほ座などの名前は全て船に関係していますが、これらの星座は、元は「アルゴ座」というひとつの星座だったのですが、近年になってこれらの星座に分割されてしまいました。

一説では、天体の位置を表わしにくいという理由で分割したと言われていますが、元の「アルゴ座」としてとらえた方が、形をたどりやすいとは思います。

さて、アルゴ座というのは、ギリシャ神話に出てくる「アルゴ遠征隊」に使われた船の名前から付けられています。
この遠征隊は、テッサリアのイオルコス国の王・アイソンの息子であるイアソンが編成したものです。

その目的は、コルキスの国の宝である、黄金のヒツジの毛皮を手に入れることにありました。
この黄金のヒツジの毛皮は、元は、ヘルメスが大神・ゼウスから預けられていたヒツジだと言われています。

そのヒツジは、黄金の毛だけではなく、空を飛び、人の言葉を話すことができたヒツジだと伝えられていて、おひつじ座のモデルになっているので、詳しいことは、おひつじ座の神話を参考にしてください。

ところで、イアソンは、弟のペリアスの為に王位に就けずにいましたが、いて座のモデルになっているケンタウルスの賢者・キロン(ケーロン)の元で文武を修め、やがてテッサリアに戻ってきます。
そして、この黄金のヒツジの毛皮を手に入れることを条件に、ペリアスは王位を譲ることを約束するのですが、これについては、いて座の神話を参考にしてください。

さて、これによって遠征隊が組織されることになったのですが、その船を造ったのは、ギリシャ随一と言われている名工・アルゴスです。
このアルゴスの名前から、「アルゴ号」と名づけられた船のへさきには、ドードーネの森から切り出した、人の言葉を話すと言われるかしの木で作られた飾りが取り付けられたと伝えられています。

このアルゴ号を駆ってイアソンは冒険に出かけるのですが、遠征隊には、ギリシャ神話の英雄・ヘラクレス(ヘルクレス座)、トロイの武将・アキレスの父であるぺーレウス、双子の英雄・カストルとポルックス(ふたご座)、医術の神とも言われるエスクラピウス(へびつかい座)、千里眼をもつリュンケウス、空を飛ぶことのできる兄弟・カライスとゼーテス、琴の名手・オルフェウス(こと座)など、後には星座にもなっている多くの英雄たちが集まります。

ところで、ギリシャ神話では、このアルゴ遠征隊は様々な冒険や活躍をするのですが、その物語をここで紹介するのは到底むりなので、一部を紹介しておきます。

夜空に見えるアルゴ座は、船の半分が大きな岩に隠れて描かれていますが、これはアルゴ号がシンプレガーデスの瀬戸を通る時の様子を描いているものだと言われています。

シンプレガーデスの瀬戸は、船一隻がやっと通れるほどの幅しかない狭い海峡で、両岸からは険しい岩が突き出ています。
しかも、この岩は船が通ろうとすると動き出し、通る船を砕いてしまおうとする厄介な岩です。

さすがの勇者たちもこれには困って、海峡の入り口で立ち往生してしまいます。
このとき、勇者・エウペモスは知恵をめぐらせ、一羽のハトを放ちます。
ハトが海峡に入ると、両岸から岩がせり出し、ハトを挟み込もうとします。
岩はがっしりと組み合って、ハトを捕らえたかに見えましたが、尾の羽を少しちぎられただけで、ハトは通り過ぎていきました。

岩は、再び口を開けようと離れはじめますが、この時、エウペモスは舵取りの名人・ティーピュスに合図を送ります。
アルゴ号はすばやく海峡へと走り出し、岩が再び閉じるほんの僅か先に、危うく通り抜けることができます。

しかし、船尾の一部は岩に挟まれ、失われてしまいます。
この時の様子が星座になっているのですが、星座でも、船尾が失われて描かれています。

このあとも、アルゴ号は様々な冒険をしながら、コルキスの国にたどり着きます。
そして、コルキスの王女・メディアの手伝いもあって、遠征隊は黄金のヒツジの毛皮を手に入れることができます。
(これについては、や座の神話を参考にしてみてください)

この遠征隊の記念として、アルゴ号は星座となっているのですが、黄金の毛をもっていたヒツジも、先に述べたように、おひつじ座のモデルにもなっています。
また、金のヒツジの毛皮は、眠ることのない竜に守られていたのですが、この竜も、りゅう座のモデルになっていると言われています。

その後、イアソンはメディアを伴ってテッサリアに帰って行くのですが、このふたりの物語も、ギリシャ神話の中で伝えられていて、それについても、や座の神話などで紹介しているので、そちらの方も参考にしてみてください。

このページの先頭へ


このページの先頭へ