おひつじ座の神話・伝説 |
プリクソスとヘレー (ローマ時代のフレスコ画) おひつじ座のモデルは、ギリシア神話の物語に伝わる、黄金の毛をもつヒツジだと言われています。 このヒツジは海の上を飛ぶこともできたと言われていますが、この絵では、海に落ちてしまったヘレを救おうとして、手を伸ばしているプリクソスの姿が描かれています。 |
黄金の毛をもつヒツジ おひつじ座はあまり目立つ星座ではありませんが、古くからあった星座で、黄道十二星座のひとつにもなっています。 現在の春分点は、隣のうお座にありますが、かつては、おひつじ座に春分点があって、重要な星座として扱われていました。 おひつじ座の神話は、ギリシャ神話に登場する黄金の毛をもつヒツジがモデルになっています。 このヒツジは、ヘルメスが大神・ゼウスから預けられていたヒツジで、黄金の毛だけではなく、空を飛び、人の言葉を話すことができると伝えられています。 さて、テッサリア王・アイオロスの息子・アタマスには、テーバイ王の娘であるイノー(イーノー)が妃となっていました。 アタマスには、雲の精霊・ネペレーという妃がいたのですが、訳があり、ネペレーはアタマスのもとを去っていました。 やがて、アタマスとイノーの間にはふたりのこどもが誕生するのですが、アタマスには、前の妃・ネペレーとの間に、ふたりの子どもがいました。 ひとりはプリクソスという青年で、ひとりはヘレという娘でした。 イノーはやはり自分の子どもたちが可愛く、プリクソスとヘレをいつも邪魔者にしていました。 ある時、イノーは農民たちをだまして、畑にまく種を火であぶらせ、芽が出ないようにしてしまいます。 もちろん、この年は大凶作となって、人々は飢え苦しみます。 アタマスは王位を継いでいましたが、これには困ってしまい、大神・ゼウスに神託を伺おうとします。 しかし、ここでもイーノーは神官たちをだまし、「プリクソスを生贄に捧げなければならない」と告げさせます。 これを聞いたアタマスは大変困ってしまいますが、神託でもあり、プリクソスを捧げなければならなくなってしまいます。 このことを知ったネペレーは、すべてイノーの計略であることを突き止め、プリクソスとヘレを天空へと隠してしまいます。 そして、ヘルメスが預かっていた黄金の毛をもつヒツジにふたりを乗せ、遠くへと逃がします。 ヒツジは大空へと舞い上がり、テッサリアの国からはるか遠くへと飛んで行きます。 イノーの手からは逃れたふたりですが、しばらく飛んでいるうち、妹のヘレは思わず地上を眺めてしまいます。 ヘレはあまりの高さに目がくらみ、ヒツジの背中から落ちてしまいます。 これに驚き、悲しむプリクソスですが、ヒツジはプリクソスを慰め、更に遠くへ飛び続けます。 やがて、ヒツジはコルキスの国にたどり着きますが、コルキス王・アイアーテスはプリクソスを温かく向かい入れます。 その後、プリクソスは王女・カルキオぺーと結ばれ、その地で幸せに暮らしたと伝えられていますが、プリクソスはヒツジが亡くなった後、その黄金の毛皮を国の宝として、一本のかしの木に吊るし、眠ることのない竜にそれを守らせたとも伝えられています。 この黄金の毛をもつヒツジが、おひつじ座として描かれているのですが、コルキスの国にたどり着いたプリクソスは、この牡羊を神への生贄として捧げたとも言われています。 ところで、この毛皮を守っていた竜も、りゅう座のモデルになっています。 そして、この黄金のヒツジの毛皮を得るために、ギリシャ神話の中でも有名な、アルゴ遠征隊の冒険がはじまります。 遠征隊の隊長はイアソンですが、イアソンはプリクソスの孫にあたる人物でもあることが、神話をさらに興味深いものにしています。 また、妹のヘレが落ちてしまったところは、ダルダネルス(ダーダネルス)海峡だと言われていますが、かつてこの海峡は「ヘレの海」、ヘレスポントス海峡と呼ばれていました。 このページの先頭へ |