星座図鑑・りゅう座の神話

りゅう座の神話・伝説


ヘスペリデスの園 (フレデリック・レイトン)

りゅう座は、ギリシア神話に伝わる、ヘスペリデスの庭の黄金のリンゴの木を守っている竜がモデルだと言われています。

この絵では、黄金のリンゴの木と一緒に、ヘスペリデスの姉妹と、大きな蛇が描かれています。

黄金のりんごを守る竜

りゅう座は、北極星のまわりを回っている星座で、こぐま座を半分取り囲むように回っています。
紀元前1200年頃には「へび座」と呼ばれていた星座で、ギリシャ時代になって、りゅう座と呼ばれるようになりました。

りゅう座は長くて曲がった形をしていますが、こと座のベガと、北極星の間にある四個の星が目印で、二等星を含んだ、ゆがんだ四角形をしています。
この四角形が、竜の頭で、これを見つければ、あとは星座図などを見ながら、形をたどっていくことができます。

さて、りゅう座の神話は、かに座しし座うみへび座などのように、ギリシャ神話の英雄・ヘルクレス(ヘラクレス)の冒険物語としてとらえられています。

ギリシャ神話でヘルクレスは12の冒険をしますが、その内のひとつが、黄金のりんごを取ってくることです。
このりんごの木は、ゼウスの結婚を祝って、大地の女神・ガイアが贈ったもので、ヘスペリデスの森にあると言われていました。

ゼウスは、この黄金のりんごが実る木を、ヘスペリデスという姉妹に預け、これを大切に育てるように命じていました。
ヘスペリデスの姉妹は、巨人族・タイタンのひとり、アトラスの娘たちです。
姉妹はゼウスに命じられたとおり、自分たちの庭(ヘスペリデスの庭)で、この木を大切に育てていました。

ヘルクレスは、このヘスペリデスの庭へ行き、黄金のりんごを取ってこなければならないのですが、この木は一匹の竜に守れていて、誰も近づくことができません。
竜は眠ることなく、しっかりとこの木を守り、ヘルクレスといえども、とても簡単には近寄ることができません。

しかし、ヘルクレスにとっての一番の問題は、ヘスペリデスの庭がどこにあるのか、それが分からないことでした。
ヘルクレスは方々を訪ね歩き、やがて、ヘスペリデス姉妹の父であるアトラスを探し出すことができます。

ところが、アトラスはタイタン族のひとりとしてゼウスと戦ったため、天地を支え続ける罰を受けています。
これについては、うしかい座の神話で紹介しているので、参考にしてみてください。

アトラスはヘルクレスの願いを聞きましたが、天地を支えているので、どうにも動きがとれません。
そこで、アトラスの代わりにヘルクレスが大地を支え、その間にアトラスが娘のもとに行き、りんごを取ってくることになりました。

黄金のりんごの木は竜に守られていて、姉妹のほかは誰も近づくことさえできません。
しかし、姉妹の父であるアトラスならば、きっと娘たちを説得して、黄金のりんごを手にいれることが出来るはずです。

さて、ヘルクレスはアトラスの代わりに天を支えます。
その重さに背中は曲がり、足は深く大地に沈み込んでしまいます。
それでも、ヘルクレスはどうにか天を支え続けます。

その間にアトラスはヘスペリデスの庭へ行き、黄金のりんごを手に入れて、それをヘルクレスに渡したと言われています。

ところで、この時、りんごの木を守っていた竜が、りゅう座となって夜空に昇っているのですが、この神話には、少し違って伝わっているところがあります。
竜の名前はラドンだと言われていて、りんごの木を育てていたのはタイタン族で、アトラスはその兄にあたるとも伝えられています。

また、りんごの木を守るラドンと呼ばれる竜は、百の目を持っていたのですが、この竜は、ヘラクレスによって退治されたとも言われています。
ヘルクレスは、うみへび座になっている怪物・ヒドラをすでに退治していて、矢にはヒドラを毒を塗っておいて、この矢で竜を退治したと伝えられています。
そして、そのあとヘルクレスが天を支え、アトラスがタイタン族を説得して黄金のりんごを手に入れたとされています。

しかし、違った一説では、ギリシア神話で紹介されているアルゴ号の冒険物語の中で、イアソンたちが探していた金の羊の毛皮を守っていた竜だとも言われています。

このように、ギリシャ神話をはじめ、神話にはいくつかのバリエーションなどがありますが、いずれにしても、りんごの木や金の羊の毛皮を守った忠実な竜はゼウスの目に止まり、星座になってから、北極星を守って、そのまわりを回っているのだということです。

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