星座図鑑・はくちょう座の神話

はくちょう座の神話・伝説

レダと白鳥 (ギュスターヴ・モロー)

はくちょう座は、大神・ゼウスが姿を変えた白鳥がモデルだと言われています。

この絵では、白鳥の後には光が輝いていて、白鳥がゼウスということを暗示しています

白鳥に姿を変えた大神・ゼウス

白鳥座は、夏から秋にかけて天頂辺りに見ることができる星座で、大きな十字が目に付く、端正な星座です。
この十字は「北十字星」と呼ばれていて、白鳥の尾のところには、一等星・デネブが輝いています。
デネブはこと座のベガ、わし座のアルタイルと共に、「夏の大三角形」と呼ばれる大きな二等辺三角形を形作っています。

はくちょう座は、大きく羽根を広げて飛んでいる白鳥の姿を表していますが、この星座は、ギリシャ時代には「はくちょう座」とも「とり座」とも呼ばれていたと言われています。
紀元前1200年頃には既に知られていた古い星座で、ギリシャ神話では、大神・ゼウスが変身した姿だと伝えられています。

さて、大神・ゼウスはいつも美しいものに惹かれてしまうのですが、この時はスパルタの王・テュンダレオスの妃・レダに惹かれてしまいます。
レダは、その美しさには並ぶものがないと言われているほどの大変美しい女性で、大神・ゼウスもその虜になってしまいます。

ある日、レダは侍女たちと一緒に宮殿近くの泉に出かけていきます。
そして、侍女たちを見張りにあたらせ、裸身となって水浴びをはじめます。

天上からこれを認めたゼウスは、その美しさに魅せられ、一羽の美しい白鳥に姿を変えて、レダのいる泉へと舞い降りていきます。
泉に舞い降りた白鳥を見つけたレダは、それがゼウスの化身とも知らず、美しい白鳥だとばかり、やさしく抱き寄せてしまいます。

この白鳥の姿が、夜空に輝くはくちょう座として描かれていると伝えられていますが、夏の星座であるわし座もゼウスが変身した姿だと伝えられています。
しかし、この時は、女性も羨む美しい少年、ガニメドをさらって行ったときの鷲の姿が描かれています。

これとは対照的に、レダに思いを寄せたゼウスが白鳥の姿に変身するのは、実に神話的ではないかと思います。

ところで、神話によると、レダはその後、大きな卵をふたつ産むことになります。
そして、ひとつの卵からは双子の兄弟、カストルとポルックスが生まれますが、この二人がふたご座になっていることは、皆さんもよくご存知だと思います。

もうひとつの卵からは双子の姉妹が誕生し、ひとりはトロイのヘレン、もうひとりはクリュテムメストラという、いずれも美しい女性が誕生します。
クリュテムメストラは、後にトロイ戦争の時のギリシャ軍の総大将・アガメムノンの妻となりますが、アガメムノンが出陣している時に、夫を謀殺する悪女として伝えられています。

また、この白鳥は、琴の名手・オルフェウス(オルペウス)とも、ゼウスの怒りにふれてエリダヌス川(エリダヌス座)に落ちたパエトンを探し回る友人・キュクノスとも言われています。

パエトンは太陽神・アポロン(ヘリオス)の息子で、ある日、アポロンが乗る太陽の馬車を借りて天空を駆けますが、うまく馬車を操ることができず、最後にはゼウスの稲妻に打たれ、馬車と共にエリダヌス川に落ちていったと言われています。
この時、川に落ちたパエトンを探し回る友人のキュクノスを、アポロンが天に上げて、はくちょう座にしたとも言われています。

一方、琴の名手・オルフェウスは、美しい妻・エウリディケが亡くなった後、悲嘆のうちに生涯を終えますが、その才能を惜しんで、音楽の神でもあるアポロンが星座にしたとも伝えられています。
なるほど、はくちょう座の隣には、こと座がありますが、この琴はオルフェウスが使っていた琴だと言われています。

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