てんびん座の神話・伝説 |
地上を去るアストレア (サルヴァトル・ローザ) てんびん座のモデルは、女神・アストレアがもっている天秤がモデルになっていると言われています。 この絵では、地上を去ろうとしているアストレアを、その天秤を持って引きとめようとしている人々の姿が描かれています。 |
アストレアの天秤 てんびん座は、夏の夜空に見える星座のひとつで、さそり座の少し西の方角にあります。 三等星と四等星が「コ」の字型のようになっていて、おとめ座のスピカとさそり座のアンタレスとの、ちょうど中間くらいに位置しています。 また、てんびん座は黄道十二星座のひとつにもなっていますが、ギリシャ時代には、さそり座のハサミになっていたと言われています。 ローマ時代になってから独立した星座になったのですが、てんびん座に描かれている天秤は、女神・アストレアの持っている天秤だとされています。 さて、ギリシャ神話では、アストレアは正義の女神として描かれていて、てんびん座の近くにあるおとめ座は、アストレアの姿だとも言われています。 そして、アストレアがもっている天秤は、死者の魂を量り、悪に傾いたものを冥界におくる役目を果たしていると伝えられています。 この善悪を計るアストレアの天秤が、てんびん座になっているのですが、太古の昔、神々は人々と一緒に暮らし、人々もまた、神々を敬って暮らしていました。 争い事もなく、平和な毎日が続き、アストレアの天秤は善の皿が傾くばかりで、計るものさえありませんでした。 しかし、よく知られているように、パンドラが世界中の災厄をつめていた箱(パンドラの箱)の蓋を開けてしまいます。 閉じ込められていた全ての災厄は箱から飛び出し、世界中へと飛び散ってしまいます。 さあ、これからが大変です。 人々は、ほかの人が持っているものが欲しくなり、人よりも美しく、誰よりも自分が偉いように思いはじめます。 働くこともやめて、人のものを奪い、至るところで争いが起こります。 こうなると、アストレアは大忙しです。 天秤をもって走りまわり、人々の善悪を計らなければなりません。 一方、ほかの神々は互いが争う様子を見て、これまでは一緒に暮らしていた人々のもとを去って、天上の世界へと帰って行きます。 しかし、アストレアだけは人の世界に留まり、善行を薦め、悪を改めるよう人々を諭します。 けれども、アストレアの天秤は、悪に傾くばかりです。 やがて人々は憎しみ合うようになり、武器をつくって、いっそう激しく争いはじめました。 大きな戦争をはじめだし、戦いに明け暮れ、互いに殺し合いまでする始末です。 とうとうアストレアも人々を見限り、天上の世界へ帰って行ってしまいます。 そのような物語が神話で伝えられていますが、このアストレアの天秤が、てんびん座になっていると言われています。 また、アストレアが天上に去ってからの世界が、いっこうに変わっていないことは、実に悲しいことですが、この天秤は「時をはかる天秤」だとも言われています。 現在の秋分点は、おとめ座にありますが、かつての秋分点はてんびん座に位置していました。 この為、秋分の日には太陽がこの星座にかかり、昼夜の長さを等しくわけていたことから、時をはかる天秤だとも言われています。 このページの先頭へ |