おおいぬ座の神話・伝説 |
アクタイオンの死 (ティッティアーノ) おおいぬ座のモデルは、ギリシャ神話に登場する、アクタイオンが連れていた猟犬がモデルだと言われています。 この絵では、鹿の姿に変わってしまったアクタイオンに、猟犬たちが襲い掛かっているところが描かれています。 |
アクタイオンの猟犬 冬の夜空に輝くオリオン座の近くに、ふたつの犬の星座が見えます。 ひとつはおおいぬ座で、もうひとつは、こいぬ座です。 おおいぬ座には全天で一番明るい星・シリウスがあるのでよく分かると思いますが、こいぬ座にも1等星のプロキオンが輝いているので、この星座も目に留まるものだと思います。 ところで、このふたつの星座は、ギリシャ神話の中でもよく知られている、オリオンがいつも狩りに伴っていた猟犬だと言われています。 オリオン座の近くあることから、広くそのように伝えられていますが、これらの星座には、他にもいくつかの神話が伝えられています。 そのひとつはギリシャ神話にあるアクタイオンの物語ですが、アクタイオンはフェニキア王カドモスの孫にあたります。 アクタイオンは狩りの名人で、若くてたくましい青年でした。 毎日、山野を駆け巡っては、シカやイノシシなど捕らえていましたが、狩にはいつもメランポスと名づけられた忠実な猟犬をはじめ、何頭かのイヌを連れていました。 ある日、狩をしていたアクタイオンは、シカの群れを追って深い森の中に迷い込んでしまいます。 やがては日も暮れ、猟犬たちともはぐれてしまったアクタイオンは、ただ森の中をさ迷い歩くばかりです。 そうしている内、森の中に妖しく光るものを認めました。 アクタイオンは人がいるものだとばかりと思いに、その光に近づいていきます。 光に誘われて森の中を歩いていくと、やがて美しい泉の畔にたどり着きました。 さて、そこには裸身で水浴びをしている、ひとりの美しい女性がいるではありませんか。 アクタイオンは声も出ないほど驚きましたが、その姿は、なんと女神アルテミス(ダイアナ)にほかなりません。 気配に気づいたアルテミスは、「わたしの裸身を見たと、人々に向かって言わせるわけにはいかない」と怒り、泉の水をすくい上げ、さっとアクタイオンに浴びせました。 これにも驚いたアクタイオンですが、更に驚くことが起こります。 泉の水を浴びた体には毛が生え出し、手足は細く、指はふたつに割れた蹄に変わっていきます。 額からは角が生え出し、気が付けば一頭のシカの姿に変わっていました。 アルテミスは既に消え失せ、アクタイオンは成すすべもありません。 途方にくれたまま、森の中をさ迷い歩くばかりです。 どれほど歩いたのか、やがて、はぐれていた猟犬たちが集まってきました。 アクタイオンはメランポスを見つけ、「よかった、アクタイオンだ。どうか助けておくれ」と、思わず叫びます。 しかし、その声も自分の声ではありません。 猟犬たちも、牙をむいて襲いかかろうとしています。 アルテミスによって姿を変えられてしまったアクタイオンは、猟犬たちにとっては、一頭のシカでしかありません。 無残にも、アクタイオンは自分の飼っていた猟犬たちに命を奪われてしまいますが、この猟犬たちが、おおいぬ座、そして、こいぬ座にもなっているとも言われています。 どうもすっきりしない感じがしないでもありませんが、女神・アルテミスからすれば、やはり猟犬たちの手柄を褒めて、星座にしてやったのではないでしょうか。 ところで、この神話でも、おおいぬ座はこいぬ座と一緒に扱われていますが、おおいぬ座がこの場所に描かれるようになったのは、紀元前300年頃だと言われています。 当時は「犬座」と呼ばれていて、こぐま座とは別の星座として扱われていました。 そこで、おおいぬ座(当時の犬座)は、アクタイオンの猟犬だけでなく、ほかの神話とも関連付けられることになります。 他の物語としては、アテネ王・イカリオスが飼っていたメーラだとも言われています。 メーラはイカリオスに大変可愛がられ、メーラもイカリオスによく従った忠犬でした。 やがてイカリオスは病で亡くなってしまいますが、メーラはその墓から動こうとせず、食事もとらないまま、イカリオスの後を追うように死んだと伝えられています。 その忠孝を称えられ、メーラは、おおいぬ座になったと言われています。 また、おおいぬ座は猟師・ケファリスの猟犬・レラプスだとも伝えられています。 レラプスは優れた猟犬で、駆けるのも大変速く、どんな獲物も決して逃さなかったと言われています。 中でも、もっとも速いキツネを捕まえたことから、星座にしてもらったとされていますが、この星座が、おおいぬ座だとも伝わっています。 更に、おおいぬ座のモデルになっているのは、ギリシア神話の英雄・ヘラクレス(ヘルクレス座)がとらえた地獄の番犬・ケルベロスだとも言われていて、レラプスは、月と狩猟の女神・アルテミスの侍女・プロクリスが飼っていたとも言われています。 このように、おおいぬ座には様々な神話や伝説が伝わっていますが、犬座が、おおいぬ座と呼ばれるようになったのは、中世のアラビアに伝わってからのことだとされています。 このページの先頭へ |