星座図鑑・かんむり座の神話

かんむり座の神話・伝説

バッカスとアリアドネ (ティツィアーノ・ヴェチェッリオ)

かんむり座のモデルは、ギリシア神話の酒神・ディオニュソス(バッカス)がアリアドネに贈った冠だと言われています。

この絵では、ディオニュソスがはじめてアリアドネに出会ったときの様子が描かれています。

ディオニュソスがアリアドネに贈った冠

春の夜、ひときわ明るく輝いている1等星・アークトゥルスがあるうしかい座の東に、半円を描いているように見えるのが、かんむり座です。
二等星がひとつだけの、比較的暗い星座ですが、形が整っているので見つけやすい星座です。

かんむり座は、紀元前3200年頃にはできていた星座ですが、ギリシャ神話では、コップ座とも関係する酒神・ディオニュソス(バッカス)に結び付けられています。
神話の物語によると、この冠はディオニュソスがミノス王の娘・アリアドネに贈った冠だと伝えられています。

さて、ディオニュソスがアリアドネに冠を贈った物語ですが、それは怪物・ミノタウルスの神話に基づいています。

ミノタウルスは、クレタ島の王ミノスの妃(名前は、パーシファエとも言われています)と牛との間に生まれた怪物で、頭が牛で、体は人間という怪物です。
妃は牛の模型をつくり、その中に入って牛と交わったとも言われていますが、いずれにしても、王も妃も困り果て、ミノタウロスを地下の迷路に押し込めてしまいます。

ミノス王の宮殿は大変見事なものでしたが、この宮殿は、名工と言われているダイダロスが造ったもので、地下の宮殿は大きな迷路になっていて、一度入ると誰も出てくることができないほどの迷路でした。

この大迷路にミノタウロスを閉じ込めてしまうのですが、毎年、七人の青年と七人の娘を生贄として捧げていました。
この生贄たちは、当時は敵であったアテネから連れて来られていましたが、ある年、テセウスという青年が生贄の中に加わっていました。

テセウスはアテネ王・アイゲウスの息子で、ギリシャ神話の英雄、ヘラクレス(ヘルクレス座になっています)にも負けない武勇に優れた青年です。
このテセウスがクレタ島にやってきた時、ミノス王の娘・アリアドネは、一目見てテセウスに思いを寄せるようになります。

いよいよテセウスが迷路に入ろうとするとき、アリアドネはひとつの糸玉を渡します。
アリアドネは、糸の先を入り口にくくりつけてから迷路へ入り、帰る時には、これを手繰って帰ってくるようにと伝えます。
テセウスは大いに感謝し、無事に帰ることができれば、アリアドネを一緒に連れて帰ることを約束します。

テセウスは迷路の中に入っていき、やがてミノタウルスと出会いますが、見事にこれを倒し、アリアドネに言われたように糸をたどって帰ってくるとことができます。

ところで、約束どおりテセウスはアリアドネを連れてアテネへと帰っていきますが、アリアドネは途中でひどい船酔いに悩まされたので、船は近くの島に寄って休むことにします。
その夜のこと、テセウスは「アリアドネをアテネに連れて行くことは、やがて不幸をもたらすことになる」という神託を受け、アリアドネがまだ休んでいる間に、彼女を残して船を出します。

目覚めたアリアドネは、自分ひとりだけが残されていることを知り、驚きとともにひどく悲しみます。
クレタへ戻ることもできず、その悲しみは大変深く、アリアドネはただ泣くばかりです。

その時、美しい音楽がどこからともなく流れてきます。
すると、森の鳥や獣を従えて、アリアドネの前に酒神・ディオニュソスが現れます。
ディオニュソスは悲しんでいるアリアドネをやさしく慰め、宝石を飾った冠を贈り、結婚を求めたと伝えられています。

かんむり座は、このギリシャ神話に出てくる冠が描かれたものだと言われていますが、ディオニュソスとアリアドネは、その後幸せに暮らしたとも伝えられています。

また、ミノタウロスが閉じ込められたミノス王の宮殿は、コットレルが選んだ世界の七不思議の中のひとつにもなっていますが、妃が入ったと言われる牛の模型は、ダイダロスが作ったのだと伝えられています。
このほか、ミノタウロスーの生贄は、九年間の間に12人の青年と娘が送られたとも言われています。

あと、ディオニュソスはコップ座にも関係しているので、コップ座の神話も参考にしてみてください。

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