ペルセウス座の神話・伝説 |
アンドロメダを救うペルセウス (パオロ・ヴェロネーゼ) ペルセウス座のモデルは、ギリシア神話の勇者・ペルセウスがモデルになっています。 ペルセウスは様々な冒険をしますが、この絵では、王女・アンドロメダを救うため、怪物・ティアマトと戦おうとするところが描かれています。 |
ギリシア神話の勇者ペルセウス ペルセウス座は、古代バビロニアの時代から知られていた星座で、当時は、最高神・マルドゥクの姿だと言われていました。 アンドロメダ座の下にある星座がペルセウス座ですが、見つけにくいときは、「W」字をしているカシオペア座と、おうし座のプレアデス星団との真ん中辺りを探してみれば見つかると思います。 さて、ペルセウス座は、ギリシャ神話の英雄、ペルセウスの姿であることは言うまでもありません。 また、ペルセウスは、神話の中で大活躍しますが、ケフェウス座、カシオペア座、アンドロメダ座、ぺガスス座、くじら座なども、ペルセウスの物語に登場する人物たちが星座になったものです。 これらは、「エチオピア王家の星座」などとも呼ばれていて、ペルセウスを中心にした、ひとつの神話で結ばれています。 ですから、ペルセウスの神話は、いずれの星座にもまつわっている物語なので長くなりますが、これらの物語を紹介しておきます。 アルゴスの国王・アクリシウスには、ダナエという美しい娘がいました。 ある夜、アクリシウスは夢を見るのですが、それは「将来、お前は娘が産んだ男子に滅ぼされる運命にある」という神のお告げでした。 驚いたアクリシウスは、これを恐れ、ダナエを城の中にある高い塔のひと部屋に閉じ込め、決して誰にも合わせないようにします。 ダナエは、ひとり塔に閉じ込められた日々を過ごしていたのですが、ある時、大神・ゼウスは天空からダナエを認めます。 ゼウスは、黄金の雨となってダナエに降り注ぎ、やがて、ダナエはひとりの男の子を出産します。 この子どもが、後にギリシャ神話の勇者となるペルセウスです。 ところで、父であるアクリシウスは大慌てです。 自分が滅ぼされてしまうかもしれない男の子が生まれたので、これには困りました。 それに、半分はゼウスの血を引いているのですから、どうにも困り果ててしまいます。 アクリシウスは、ふたりを遠くへやってしまう事を考え、乱暴にも、ふたりを大きな木箱に詰め込んで、海へと流してしまいます。 この木箱は、やがてセリポスという島に流れ着きます。 木箱は島の漁師・ディクテスによって拾われるのですが、蓋を開けてみると、子どもを抱いて泣いている美しい女性が閉じ込められていることに、ディクテスはとても驚きます。 ディクテスは心が優しく、小さなペルセウスとダナエを、自分のうちへ連れて行きます。 そして、やがてはダナエも落ち着き、ペルセウスもたくましい青年として成長していきます。 しかし、ディクテスの兄・ポリデクスは、ダナエを我がものにしようと思うのですが、ダナエはディクテスへ心が引かれ、ポリデクスなどは相手にしません。 そればかりではなく、ポリデクスにはたくましいペルセウスも邪魔で仕方ありません。 そこで、ある祝宴の席で、ポリデクスはペルセウスに難題をふっかけます。 ポリデクスはセリポス島の王でもあったので、誕生日には祝いの宴が催されていました。 この祝宴の席で、ポリデクスは「お前は何を祝いの品としてもってきたのか」と、ペルセウスに問いかけます。 ペルセウスが何も持ってくることができないことを知っての問いですが、ペルセウスは「今は何も差し上げられませんが、いずれはゴルゴンの首でも献上いたしましょう」と答えてしまいます。 ポリデクスは待っていたとばかりに、「では、さっそくその首を取ってきてもらおうではないか」と、ペルセウスに言いつけてしまいます。 このゴルゴンの首というのは、ポルキュスという怪物と、怪魚の女神・ケートーとの間に生まれた、三姉妹の怪物たちです。 それぞれ、ステノー、エウリュアレ、そしてメドゥーサという名前で、ステノーとエウリュアレは不死身の怪物でした。 この三姉妹は、神々の罰を付けて、天か地かとも分からないところに住んでいましたが、メドゥーサは、髪の毛はすべて蛇の首で、ライオンのように鋭い牙をもっていて、ゾウのように大きい体をしていました。 そればかりでなく、黄金の翼をもっていて、空を飛ぶことが出来るほか、その姿を見たものは、恐ろしさのあまり石になってしまうという怪物です。 さて、このゴルゴンの首を取ってくると言ってしまったペルセウスですが、約束はしたものの、いったいゴルゴンがどこに居るのかさえ分かりません。 ペルセウスが困っていると、大神・ゼウスは、知恵の神・アテナと伝令の神・ヘルメスに、ペルセウスのことを頼みます。 ヘルメスは、それをかぶると姿が見えなくなる兜と、自由に飛ぶことができる靴、そしてメドゥーサの首を入れる袋を、ペルセウスに与えます。 そして、アテナは鏡のように輝いた剣と楯を与え、ゴルゴン三姉妹の姉であるグライアイのところへ、ぺセウスを導きます。 このグライアイだけがゴルゴン三姉妹の居場所を知っているのですが、グライアイも三姉妹の怪物で、三人でひとつの目だけしか持っていなくて、必要な時だけ貸し借りをしているような怪物です。 ぺセウスはグライアイの元へ近寄り、ヘルメスから与えられた姿が見えなくなる兜(冥界の神・ハデスのものとも言われています)を使って、うまくグライアイの目を奪い取ります。 この目を返してやる代わりに、ゴルゴンの居場所を聞き出し、ようやくぺセウスはゴルゴンの元へと向かいます。 果たして、ゴルゴンは、地の果ての天か地かも分からないようなところに住んでいましたが、この時、ゴルゴンはぐっすりと眠り込んでいました。 ステノーとエウリュアレは不死身の怪物なので、ペルセウスはメドゥーサに近寄ります。 アテナから贈られた鏡のような楯を使い、直接その姿を見ないようにして近づいていきます。 ところが、メドゥーサの髪の毛の蛇だけは、眠っていませんでした。 蛇はペルセウスに襲い掛かってきましたが、ペルセウスは剣でこれらを切り払い、メドゥーサの首も切り落としてしまいます。 流れ出たメドゥーサの血からは、一頭の馬が飛び出しましたが、これが、あとに星座になる天馬・ぺガススです。 この騒ぎに、ステノーとエウリュアレは目を覚まし、事の様子を知ると、怒りにもえてペルセウスに襲い掛かってきます。 しかし、ペルセウスは、ヘルメスからもらった袋にメドゥーサの首を素早くおさめ、姿を隠す兜をつかって身を隠し、ぺガススと共に空へと逃れていきます。 こうして、ペルセウスはゴルゴンの首を手に入れることが出来たのですが、ペルセウスの冒険はさらに続きます。 ペルセウスは、天馬・ぺガススに乗ってギリシャを目指していましたが、アフリカの北にあるエチオピアという国を通りかかったときのことです。 海岸にひとりの美しい娘が鎖に繋がれているのを見つけ、ペルセウスはその近くに降りていきました。 この娘がアンドロメダなのですが、アンドロメダはエチオピアの国王・ケフェウスと妃・カシオペアとの間の娘です。 ペルセウスが事情を聞くと、アンドロメダは、怪物・ティアマトの生贄になっていると言います。 ティアマトはくじらの怪物で、体は島の大きさほどもあり、鋭い牙と爪を持っているうえ、半ば竜のような体をしている怪物です。 アンドロメダの母でもあるカシオペアは大変美しい女性でしたが、「この世には、わたしよりも美しいものはいないだろう。海のニンフたちもわたしの美しさには勝るまい」などと、自分の美を誇っていました。 海のニンフたちは、このことを海神・ポセイドンの妃・アンピトリテーの耳に入れます。 アンピトリテーは、もとはニンフだったので、これを聞いてひどく怒ります。 彼女は夫のポセイドンに、カシオペアを懲らしめることを頼みます。 こうして、ポセイドンは怪物・ティアマトを送り込むことになり、ティアマトは船を襲い、海で暴れては、エチオピアの国に大津波などをもたらしていました。 人々は大いに困り、ケフェウス王も困り果てます。 神殿へ行き、神託を請うことになったのですが、その神託とは「アンドロメダをティアマトの生贄にすること」だったのです。 ケフェウス王もカシオペアも悲嘆にくれましたが、どうする事もできず、とうとうアンドロメダを生贄にすることにしたのです。 このことを聞いたペルセウスは、アンドロメダを救う為、ティアマトを退治することを決めます。 しばらくすると、空は黒ずみ、海は大きくうねりはじめます。 すると、耳を覆うばかりの大きな唸り声を上げて、ティアマトが海の中から現れました。 ティアマトは、山も飲み込んでしまうほどの大きな口を開け、アンドロメダをひと口に呑み込もうと襲ってきます。 その時、ペルセウスは袋の中からメドゥーサの首を取り出し、さっとティアマトの目の前に差し出しました。 メドゥーサの首を見たティアマトは、たちまちのうちに石に変わり、島とも思える大きな岩に変わってしまいました。 ペルセウスは、アンドロメダを救ってケフェウス王の元を訪れますが、王もカシオペアも大喜びです。 しかし、ピーネウスとその部下たちは、ペルセウスに剣を向けます。 ピーネウスはケフェウス王の弟でもあったのですが、アンドロメダの許婚者でもあり、ペルセウスにひとり立ち去るように迫ります。 ペルセウスは剣を抜く代わりに、再びメドゥーサの首をかかげます。 たちまちピーネウスたちは石となり、ペルセウスはアンドロメダを伴ってギリシャへと戻っていくことになります。 さて、アンドロメダと共にセリポス島へ帰ったペルセウスですが、島ではポリデクテスがディクテスとダナエを神殿に閉じ込め、意のままにしようと企んでいました。 しかし、約束であったゴルゴンの首(メドゥーサの首)を差し出すと、ポリデクテスは石に変わり、ペルセウスはふたりを神殿から開放します。 ディクテスは王位に就き、ダナエは妃となって、その後は幸せに暮らしたと伝えられています。 一方、数年の後、ペルセウスはアンドロメダを伴って、アルゴスの国へと戻ります。 そこには、祖父であるアクリシウスの姿はなく、ペルセウスは国を治めます。 アクリシウスは、神託で告げられた難を逃れる為に身を隠したと言われていますが、ある時、ペルセウスはラーリッサの町で競技大会に出ていました。 この時、ペルセウスが投げた円盤がひとりの老人にあたり、老人は命を落としてしまいますが、この老人は、アクリシウスでした。 ペルセウスは、自分がいてはアルゴスに災いをもたらすと思い、王位を従兄弟のメガペンテスに譲り、ティリュンスという地に去って行ったと伝えられています。 ずいぶん長くなってしまいましたが、ギリシャ神話では、このような物語が伝えられています。 神話に出てくるペルセウス以外の、ケフェウスやカシオペア、アンドロメダ、ぺガスス、ティアマトなども星座になっていますが、すべて同じ神話に基づいています。 その後、ペルセウスとアンドロメダは幸せに暮らしたとも伝えられていて、ふたりの間には、英雄・ヘラクレスの母となるアルクメネーの父も生まれていますが、怪物・ティアマトは、なぜかくじら座になって夜空に輝いています。 また、一説では、メドゥーサは元は海神・ポセイドンの妃で、大変美しい女性だったとも言われています。 しかし、知恵の女神・アテナとその美しさを競った為、アテナの怒りから姿を変えられてしまいます。 メドゥーサは、親しい人たちが自分を見て石になっていくのを悲しみ、ポセイドンに導かれて、地の果ての世界に姿を隠したと言われています。 カシオペアについても、自分の美を誇ったのでなく、アンドロメダの美しさを誇ったのだとも言われていますが、いずれにしても、メドゥーサを倒し、アンドロメダを救い出すという、ペルセウスの物語が中心になっています。 このページの先頭へ |