星座図鑑・おうし座の神話・伝説

おうし座の神話・伝説










エウロパの誘拐 (ジャン=フランソワ・ド・トロワ)

おうし座のモデルは、牛に姿を変えた大神・ゼウスがモデルだとも言われています。

この絵では、大きな雄牛に姿を変えたゼウスが、エウロパをさらっていくところが描かれています。

エウロパをさらった雄牛

おうし座は、一等星アルデバランとプレヤデス星団(昴・すばる)、それにヒヤデス星団などから形付けられた、美しい星座です。
冬の星座の代表的なひとつで、おうし座は黄道十二星座のひとつにも挙げられています。

さて、大神・ゼウスは様々な動物に姿を変えて、美しい女性たちの元を訪れることがしばしばあります。
はくちょう座は、ゼウスが白鳥の姿になって、スパルタ王の王妃・レダの元へ行った物語に基づいていますが、おうし座にまつわる物語も、ゼウスが牛に姿を変えたと伝えられるギリシャ神話に基づいています。

エウロパはフェニキア王・アゲノールの娘で、その美しさは類稀で、天上の神々にまでその噂は伝わっていました。

ある春の日、エウロパは野原で遊んでいましたが、天上からこれを認めたゼウスは、その美しさに引かれて、1頭の大きな白い牛に姿を変えてエウロパの元に近づいていきました。

大きな牛ですが、美しく見事な白い毛をしています。
おとなしく野に寝転んでいるので、エウロパはそっと牛の背中に腰を下ろしてみました。
その途端、牛は立ち上がり、野原を駆け、山を越えて、猛然と走り出してしまいます。
エウロパはただ驚くばかりで、懸命に角につかまっているだけです。

いくつかの野と山を越え、やがて牛は海岸にたどり着きました。
しかし、ここでも牛は留まることなく、ためらいもなく海の中に入っていきます。
エウロパは驚くどころか、ただ震えるだけで、どうすることも出来ません。

牛は、まるで地をかけているようにでも海を泳ぎ、やがては大海を渡って陸地にたどり着きました。
そこで、牛ははじめてエウロパを背中から降ろし、大神・ゼウスの姿を現しました。

自分の住んでいた国からは随分と離れてしまい、悲しんでいるエウロパを慰め、ゼウスはその美しさを称えるとともに、胸のうちを語ったと伝えられています。

このゼウスが姿を変えた牛の姿が、冬の夜空に輝く、おうし座として描かれていますが、この時たどり着いた大陸が、エウロパの名前をして「ヨーロッパ大陸」と呼ばれるようになったとも言われています。


牛の姿になったイオ

ところで、ギリシャ神話にまつわるおうし座の物語は、もうひとつ伝わっているものがあります。
それは、川の神イナコスの娘・イオが牛の姿に変えられてしまったという物語です。

イオは大神・ゼウスの妻であるヘラ(へーラ)の神殿に仕えていた女性ですが、やはり大変美しい女性でした。
イオはゼウスの目にとまり愛されることになりますが、妻であるヘラはこれに気づき、イオを1頭の牛の姿に変えてしまいます。

牛の姿に変えられたイオは牛舎の中に閉じ込められ、ゼウスと会うことがないようにと、ヘラは体中に100の目をもつと言われるアルゴスという怪物に監視を命じました。

ゼウスは愛しさと哀れみのために困ってしまいますが、ヘラの手前、自ら救い出すわけにはいきません。
そこで、イオの父親であるイナコスを呼び、牛の姿に変えられてしまったイオを是非とも救い出すように命じます。

さて、イナコスが牛舎に行ってみると、はたしてどれも同じような牛ばかりで、一体どの牛がイオなのか皆目分かりません。
その上、牛舎の中にはアルゴスが見張りをしていて、どうする事もできません。
アルゴスは、98の目が眠ってしまっても、決して2つの目だけは眠ることなく、いつも辺りを監視しているという有様です。

イナコスが困っていると1頭の牝牛が近づいてきて、足を使って地面に「イオ」と書きました。
この牛こそが娘であることが分かったのでイナコスは喜びましたが、やはりアルゴスがいるので何をすることもできません。

イナコスはゼウスの元に戻り、事の次第を話しました。
話を聞いたゼウスは、父親の悲しみにも触れ、再びイオを救い出す手立てを考えます。
ゼウスは伝令神・ヘルメスを呼び、イナコスを助けてイオを救い出すように命じます。

イオを助け出すことを命じられたヘルメスは、一計を講じて牛舎へと向かいます。
そこではアルゴスがいつも見張りをしていますが、ヘルメスは「わたしが代わって見張りをしてやるから、お前はその間眠っているがいい」と勧めてみました。
アルゴスは休むことなく見張りをしているので、この勧めを受け入れ、ひと眠りすることにしました。

しかし、98の目は眠ってしまっても、あとの二つの目だけは、やはり辺りをうかがっています。
ヘルメスは困った様子もなく、ひとつの笛を取り出します。
この笛は眠りの神・ヒュプノスが作った眠りの笛で、その調べはどんなものでも眠りにつかせてしまうという調べをもっています。
ヘルメスはこの笛によって、最後のふたつの目も眠らせることに難なく成功します。

イオは牛の姿のままヘルメスに救い出され、イナコスの元に送り届けてもらいますが、この時の牛の姿が、おうし座になったとも言われています。

ところで、イオは元の美しい姿に戻ることができましたが、ヘラの嫉妬は納まらず、イオの元へアブを放ちます。
牛のまわりにはよくアブがいますが、それはヘラが放ったアブの所為だと伝えられるようになりました。

また、100の目をもつアルゴスは、その後クジャクに生まれ変わったと神話では伝えていますが、成る程、クジャクの羽が100の目に見えるような感じがします。


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