こと座の神話・伝説 |
冥府のオルフェウス・部分 (カミーユ・コロー) こと座のモデルは、ギリシア神話に登場する琴の名手・オルフェウスが使っていた竪琴だと言われています。 この絵では、エウリディケと一緒に冥界をさまようオルフェウスが描かれています。 |
オルフェウスの琴 夏の夜、天頂辺りに明るく輝いている星がベガですが、ベガは全天でも五番目に明るい星です。 日本では織姫星としても親しまれていますが、このベガがあるのがこと座で、はくちょう座のすぐ近くに描かれています。 こと座は紀元前1200年頃にはできていた星座で、ギリシャ神話では、オルフェウス(オルペウス)が持っていた竪琴がモデルだと伝えられています、 オルフェウスは、女神・カリオペとトラキア王・オイアゲロスとの間に生まれましたが(太陽神・アポロンの息子とも言われています)、カリオペは芸術の女神でもあることから、オルフェウスは優れた奏者として成長します。 その才能は際立って優れ、芸術の守護神でもあるアポロンは、ひとつの琴を贈ります。 オルフェウスは、アルゴ号の大冒険にも加わっていますが、オルフェウスがこの琴をとって演奏すると、森は静まり、動物たちも聞き入ったと言われる程です。 やがて、オルフェウスは美しいニンフ・エウリディケと結婚し、幸せな日々を過ごします。 しかし、それも長くは続かず、ある日、エウリディケは野で毒蛇にかまれ、亡くなってしまいます。 オルフェウスは悲しみ嘆くばかりですが、どうしてもエウリディケのことを諦めることができません。 どうにか生き返らすことはできないかと強く思い、冥界へとさまよっていきます。 冥界にはカロンという番人と、ケルベロスという番犬が立ち入るものを見張っています。 このケルベロスは、三つのへびの首をもつ怪物で、とうてい敵うはずもありません。 そこでオルフェウスは琴を取り出し、美しい音楽を奏でます。 琴から流れる調べはカロンとケルベロスを魅了し、その間にオルフェウスは冥界へと入っていくことができました。 やがて冥界の王・プルトーン(ハデス)の元へたどり着いたオルフェウスは、エウリディケを地上に戻してほしいと懇願します。 しかし、プルトーンはこの願いを聞き入れるわけにはいきません。 オルフェウスは再び琴を取り出し、願いを込めて演奏します。 見事な音色は冥界の全てに響き渡り、全てのものが感動して聞いていました。 王妃・ペルセフォネはオルフェウスの思いを汲み、プルトーンにエウリディケを地上に戻してやるよう説得します。 ペルセフォネは、「おとめ座の神話」で紹介していますが、元は地上に住んでいて、プルトーンの為に冥界に連れてこられた女性です。 さて、プルトーンもようやく願いを聞き入れ、エウリディケを地上へ戻してやることにしました。 但し、地上に戻るまでは、決してエウリディケの顔を見ないことを、オルフェウスに約束させます。 オルフェウスはとても喜び、さっそくエウリディケを連れて地上へと向かいます。 しばらく行くと、地上の光が僅かに見えてきます。 あともう少しという喜びで、オルフェウスは、思わずエウリディケの方へ振り返りました。 すると、たちまちの内にエウリディケの姿は消えてしまい、再び冥界へと連れ戻されてしまいます。 驚いたオルフェウスは急いで取って返し、再びプルトーンに願います。 しかし、今度ばかりはプルトーンも願いに応じてくません。 オルフェウスがいくら琴をとって奏でても、プロトーンは黙っているだけです。 やがて、願いが聞き入れられないことを知ったオルフェウスは地上へと戻っていきますが、二度と琴を奏でることもなく、たださ迷い歩くだけでした。 そうしているある日、オルフェウスはトラキアの女性たちの祝宴に迷い込んでしまい、琴を奏でることを頼まれます。 すっかり気落ちしてしまっているオルフェウスは首を横に振るだけで、何度頼まれても琴を弾くことはありません。 これに怒った女性たちは、石を投げて打ち殺し、オルフェウスは琴と一緒に川にすてられてしまいます。 この琴は、やがて島に流れ着きますが、島の人々や芸術の女神・ムーサイは、オルフェウスの死を憐れみ、せめていつも持っていた琴を夜空に上げたのだと伝えられています。 また、流れていた琴は、ひとりで美しい調べを奏でていたとも言われています。 こと座には、このようなギリシャ神話の物語が伝えられていますが、コリントスの王ペリアンドロスの奏者アリオンも琴の名手として知られています。 アリオンの物語については、「いるか座の神話」で紹介しているので、そちらの方も参考にしてみてください。 このページの先頭へ |