星座図鑑・ケンタウルス座の神話

ケンタウルス座の神話・伝説


ネメアの獅子を倒すヘラクレス
(フランシスコ・デ・スルバラン)


ケンタウルス座のモデルになっているのは、ギリシャ神話の英雄・ヘラクレスとも関係のある、フォーロスだと伝えられています。

この絵では、ヘラクレスがネメアの人食いライオンと格闘している様子が描かれています。

人半獣のケンタウルス

ケンタウルス座は、おとめ座のスピカが真南にある頃、ずっと下の地平線近くにその一部を見ることができる星座です。
しかし、大変きれいな星座なのですが、残念ながら、日本ではその半分ほどしか見えません。

ふつうは南半球の星座とされていて、よく見える地域では、一等星がふたつもある見事な姿を眺めることができます。
ケンタウルス座はみなみじゅうじ座を取り巻くようにありますが、かつては、みなみじゅうじ座もケンタウルス座の一部だったと言われていて、その頃は、1等星が四つもある、更に雄大な星座だったと思います。

ところで、ケンタウルス座はギリシャ神話に深く関わっているのですが、「ケンタウルス」とは人の名前などでなく、一族の名前を表わしています。
また、ケンタウルス座に見られる姿は、半身が人で、半身は馬の姿をしていますが、これもギリシャ神話で伝えられていて、その姿はケンタウルスの出生に関係付けられています。

大神・ゼウスの妃であるヘラは、言うまでもなく、大変美しい女神でした。
この妃であるヘラに、テッサリア王の息子・イクシオンが思いを寄せたことからケンタウルスは誕生します。

しかし、ケンタウルスはヘラとイクシオンの子どもではありません。
もちろん、ヘラはゼウスの妃ですから、そのような事は叶えられることではありません。
実は、これにはゼウスが関係しています。

イクシオンが妃・ヘラに思いを寄せていることに気づいたゼウスは、大層腹を立て、懲らしめのために一計を案じます。
そして、ゼウスはヘラの姿をした雲をつくり、これをイクシオンの元へと送ります。

さて、イクシオンは、愛しいヘラに会えたと思い大喜びです。
この姿がただの雲とも知らず、イクシオンは一夜を過ごします。

ところが、何とこの雲から生まれたのがケンタウルスで、その姿は、星座に見られるように、半人半獣の怪物の姿をしていました。
その上、ケンタウルスの多くは粗暴で礼儀も知らず、イクシオンの悪いところばかりを受け継ぎます。

ケンタウルスの一族はこのようにして生まれたのですが、星座になっているのはフォーラス(フォルス、ポロスなどとも)というケンタウルス族のひとりです。
フォーラスは、ギリシャ神話の英雄・ヘラクレスと関係があるのですが、ヘラクレスは他のケンタウルスとも様々な関係が語られています。

例えば、ヘラクレスは幼い頃にキロン(ケイローン)という賢者のもとで様々なことを学びますが、このキロンもケンタウルス族のひとりです。
また、エリュマントスのイノシシを退治した時も、ヘラクレスはケンタウルスのフォーラスに道案内を頼んでいます。
そして、ヘラクレスの死についても、ケンタウルスのひとり、ネスソスが関係しています。

このように、ケンタウルスとヘラクレスは深く関係があるのですが、ケンタウルス座のモデルになっているのは、道案内をしたフォーラスだと言われています。
しかも、このフォーラスの最期も、やはりヘラクレスに関係していると伝えられています。

ヘラクレスは、エリュマントスのイノシシを退治した後の祝宴で、すっかり酔ってしまいます。
その時、ほかのケンタウルスたちが酔いにまかせ、ふたりに襲いかかってきます。
怒ったヘラクレスは、あたり構わず矢を放ちます。

ケンタウルスは散り散りになって逃げ出しますが、この時、一本の流れ矢が、かつての師でもあった賢者・キロンにあたってしまい、キロンはあえなく亡くなってしまいます。
そして、キロンを助けようとしたフォーラスも、矢を受けた傷が元で死んでしまったと伝えられています。

酔いがさめたヘラクレスは、このことを深く後悔し、神々にふたりのケンタウルスを星座にしてくれるように願ったということです。
こうしてフォーラスはケンタウルス座として星座になっていますが、キロンもその博識と名声が称えられて、いて座となって夜空に輝いています。

また、ケンタウルス座のフォーラスは、手に槍を持って、東のオオカミ座の方を向いていますが、いて座は、矢をつがえてさそり座の方を狙っているように見えます。
これは、ケンタウルスの者たちが、よく狩をしたからだとも言われていて、それぞれが獲物を狙っているのだとも言われています。

あと、キロンについては「いて座の神話」、ヘラクレスについては「ヘルクレス座の神話」で紹介しているので、そちらの方も参考にしてみてくださいね。

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